昔々、天の神様であられる天帝には、織姫という娘がおりました。織姫は、とても機を織るのが上手で、毎日、機を織っていました。
「年頃になった娘に、いい相手はいないか。」
と、天帝が捜しておられました。そんな折、働き者の牛使いの彦星が、天帝のお目にとまりました。天帝が、二人を引き合わせたところ、
「何と美しい娘だ。名を何と申す。」
「織姫と申します。あなた様は?」
「私は、彦星。」
二人はたちまち互いが好きになり、結婚することになりました。二人は幸せでした。
しかし、二人の仲がよすぎるがゆえ、困ったことが起こりました。あれほど機を織るのが好きであった織姫が、機には見向きもしなくなったのでした。彦星は彦星で、牛を牽いて、田畑を耕すことも、一切しなくなりました。二人のことを、陰ながら見守っていた天帝でしたが、これには、怒りを隠せなくなりました。
天帝は、二人の間に、天の川を流されて、二人を会えなくしてしまわれました。天の川の川幅は広くて、どんなに大声で叫んでも、向こう岸に立っている人には聞こえません。ましてや、姿など見えるはずもなく。
織姫は、彦星に会えなくなった日々を紛らわそうと、また機を織ろう思いました。しかし、機の前に座りましたが、涙が出てくるばかりで、ひとつも仕事がはかどりません。彦星も、毎日物思いにふけるだけで、田畑は荒れていきました。
天帝は、そんな二人を案じて、ある日、岸にたたずんでいた二人に言われました。
「織姫よ。また一生懸命、機を織るのなら、彦星に会えるようにしてやろう。約束できるか?」
織姫は、彦星に会えるのならと、
「はい。」
と、返事をしました。
「彦星よ。もう一度たゆまず田畑を耕すのなら、織姫に会えるようにしてやろう。約束できるか?」
彦星も、織姫に会えるのならと、
「はい。」
と、返事をしました。
「約束したぞ。では毎年、七夕の夜には、ここに来て二人会うがよい。」
そして、はじめての七夕の夜のこと、二人は天の川の岸に立ち、互いのいる向こう岸を眺めておりました。すると、どこからともなく、かささぎが飛んできて、織姫の足元に降り立ちました。彦星の方にも、同じように別のかささぎが降り立ちました。
「天帝の命により、お二人の架け橋になりに参りました。」
と、かささぎが言いました。すると、次から次へとかささぎが飛んできて、翼を精一杯広げ、互いの翼をつなげていきました。見る見るうちに、天の川にかささぎの橋ができました。織姫と彦星は、両方からかささぎの橋を渡って行きました。
こうして二人は、一年に一度だけでしたが、七夕の夜に会うことができるようになりました。
それでも、七夕の夜が雨ですと、かささぎも、翼を広げて橋になることはできません。だから、私たちは、七夕飾りのたくさんある短冊の中に、『七夕の夜は晴れますように。』と、必ずこの願いの短冊をひとつかけておくのです。
【パネルシアター「七夕ものがたり」より引用】
下の写真は、津市の自宅から撮影した織姫と彦星と天の川です。明日7月7日、晴れたら、七夕伝説を思いながら夜空を眺めてみてください。